今世紀百物語

生きているのか死んでいるのか

急性胃腸炎になった事

先週の金曜日、旭川駅前を歩いていると、急にふらりとめまいがした。
「これは少し病的なめまいだな」と感じたが、その夜にすすきの で予定があったので、JRに乗って札幌へ向かった。
汽車の中で席に座っていると、今度はなぜか寒気がしてきた。
クーラーが効いていることによるものではない寒気。
これは駄目かも分からん。
札幌駅に着いてタクシーに乗り、職場に荷物を置いて、すすきのの待ち合わせ場所へ向かう。
熱があるような気がする。
やはりこれは駄目かも分からん。
しかし、酒を飲んでいると、自分の症状が理解できなくなり、楽になった。

翌日の土曜日、朝起きると、気怠い感じがあり、寒気もする。
その日は結婚式があったので予定どおり会場に向かい、夜の披露宴にも出席した。
披露宴で酒を飲んでいると、やはり、自分の症状が理解できなくなり、少し楽になった。
けれども、それでも、定期的に、ひどい腹痛に悩まされた。
腹痛が発生すると、治まるまでじっと堪えていなければならない。
そのときに顔が熱くなり、汗も出てくる。

そうこうして披露宴を終えて土曜の夜に帰宅すると、もう身体が持たない。
倒れ込み、体温を測ってみると39度以上ある。
頭痛も腹痛も治まらない。
とりあえず寝たが、夜中の3時頃から1時間おきに腹痛で起こされる。

翌日曜日の朝に病院へ行く。

急性胃腸炎。

生焼けの肉とか、痛んだ古い食材など、何か悪いものを食べたのではないか、とのこと。過去一週間くらいを思い返せと言う。

そういえば7月9日月曜日の夜、東京出張で汐留に泊まっていたので、新橋の汚なめで一人で入れそうな焼き鳥屋に入ったのだった。店員から「当店のおすすめです」と言われて白レバを注文したところ、店主が「レアに焼いておきましたのでどうぞ」と、さもサービスしておきましたよという感じでレアなレバーを持ってきたのだった。
「別にレアなレバーは好きではないし。そもそもレバーは好きではないし。レバ刺しが食べられなくなって残念だとも思っていないし。レバーをレアに焼いてもらったからといって嬉しくも何ともないし。みんながみんな生レバーが好きだとでも思っているのだろうか。」などと思いながら、結局、全部食べたのだった。
他にはつくねとかねぎまとかも食べたけれども、お腹を壊すようなものだったとは思えない。
他にはお腹を壊すような物は食べていない。
そうすると、白レバ(レアに焼いておきましたよ)が原因ではないだろうか。

そこで、「焼き鳥屋に行きました。生っぽいものもあったかも知れません。」と医師に説明した。

治療方法は、絶食することだという。
絶食しながら点滴で栄養を補給し、安静にするのが、一番早く治るのだという。
早く治りたければ入院するのが一番だけど、どうする?と聞かれた。
入院・・・。したことがない。暇そう。三連休のうち二日を入院して過ごすのはあんまりである。
同じく安静にするのでも、家でごろごろしてた方がましである。
入院まではいいです、と回答した。

その後、2時間点滴を打ち、対症療法的な薬を処方してもらって帰宅した。
そして、日曜日はまる一日、そして月曜日は昼までの半日間、水分補給をしつつ、食べ物は食べず、寝ていた。
外はとても良い天気である。

そうして、月曜日にはまともな顔ができるような状況にまで回復し、その後、現在に至っている。
まだ完治していないので、思いっきり食べたいものを食べることができない。
自分の胃腸の都合で食べたいものが食べられないというのは何と辛いことなのだろうか。
今まで胃腸が弱い人に対する配慮が足りなかつたことを反省した。

「禁煙エクササイズ」で煙草を辞める事


8月15日、実家に帰ったときに、たまたま近所の本屋で見つけた「禁煙エクササイズ」という本を手にした。

禁煙エクササイズ

その日の夜、実家でやることもなく暇だったので、本のとおりにエクササイズをしてみた。

エクササイズといっても、運動するわけではなく、自分で自分に催眠術をかけるような行為をするもの。

すると、何となく、タバコを吸いたくなくなってきた。

翌日16日は年に一度の家族ゴルフの日だった。
朝、タバコを一本吸ったが、一吸いか二吸いしただけで、もういいや、という気分になった。
今までだったら、勿体ないと思って、最後まで吸っていたと思う。
その後のゴルフ中も、タバコを吸わなくても、深呼吸をすれば平気だった。

今までは、思いつきでタバコをやめようと思っても数時間しか続いたことがないのに、16日は、朝の一本以来、吸わなくても大丈夫だし、なぜか吸いたいという気分にもならない。

恐るべし催眠術。

その後、10日ほど、タバコを吸わない日々が続いた。
その間、タバコを吸いたいとは思わないが、禁断症状らしき症状で、眠気と集中力が低下し、仕事の能率が低下した日々が続いた。
それまではたいてい夜まで仕事をして22時23時に帰宅していたが、タバコを辞めてからは集中力が続かないため、夜中まで仕事を続けられず、20時ころには早々と仕事をやめて帰宅するという日々が続いた。

そのうち、「タバコを吸いたいわけではないけれど、吸わないでこれほど仕事に支障が出るのであれば、吸ったほうがよいのではないか。」とも思えてきた。
そう思って、ついには「もうタバコを吸おう!」と決意してタバコを買ったりもしたが、そのタバコを手にしても、なぜかそれを吸うことができない。
理由を説明することはできないが、何となく吸えない。

本当に恐るべし催眠術。

結局、タバコを買って、でも吸うことができず、そのまま捨てる、という、意味不明なことを数回繰り返した。

そして、その後、酔っ払ったときに、「酔っ払っていれば催眠術の効果も外れているだろう」と思って、何本かタバコを吸ってみたところ、吸えた。
「これでもうスモーカーに逆戻りか」と思いきや、次の日、朝起きてみて、昨夜吸ったタバコを手にしても、前日までと同じように、なぜか吸えない。
それが8月28日の話。

これは本当に困った。
タバコを吸いたくてもなぜか吸えない。
しかし、吸わなければ、仕事に大変支障が出てしまう。

ネットで色々調べると、こういことらしい。
ニコチンを摂取していたから自力でアセチルコリンを生成することができなくなっている。
だから禁煙すると、眠気などの症状が起こる。
自力でアセチルコリンを生成できるように戻るまでしばらく時間がかかる、とのこと。

しかし、自力でアセチルコリンを生成できるように戻るまで待ってなどいられない。
だったら、タバコを吸わずにニコチンを摂取するしかない。
そこで思い至ったのが、ベタな結論であるところの、ニコチンパッチである。

仕事のある平日はニコチンパッチを付ける生活が始まった。

そして、気づけば、そのような生活が、かれこれもうすぐ1か月近く続いている。

まだ昼間の眠気があるが、集中力は回復してきたような気もする。
夜の起案もできるようになってきた。
もしかすると、昼間の眠気は、タバコをやめたせいではなく、もともとだったかも知れない。

タバコは値上がりするし体に悪そうだしやめたほうが良いのだろうとは思うが、絶対にやめるぞと強い決意をしているわけでもなく、最近は催眠術の効果も薄れてきているような気がするので、いつ喫煙者に戻るか分からない。
しかし、吸いたいのを我慢しているわけではない。
ニコチンパッチが不要になっているわけでもない。

自分は今後一体どうなってしまうのでしょうか。

とんがりコーンの呪縛

甲:「やあ乙君、今日はとんがりコーンについて検討するのだつたね。」
乙:「はい、そうでした。甲さんは、全てのとんがりコーンは食べられると思いますか。」
甲:「食べられると云うのは、食べても大丈夫と云う意味かい。」
乙:「そうです。」
甲:「否、腐つたとんがりコーンは食べられないから、全てのとんがりコーンは食べられるとは云えないだろう。君はそうは思わないのかい。」
乙:「腐つたとんがりコーンと云うものは無いと思います。」
甲:「ううん、とんがりコーンは腐らないと云うことかい。そりやあとんがりコーンはそう簡単には腐らないと思うが、全く腐らないと云うことは無いだろう。君は全てのとんがりコーンは食べられるとでも云うのかい。」
乙:「そうです。全てのとんがりコーンは食べられると思います。」
甲:「それは食べても大丈夫と云う意味で、だよね。」
乙:「その通りです。」
甲:「ううん、しかし腐つたとんがりコーンは食べても大丈夫と云う事は無いだろうし、例えば泥水や便器の中に落としてしまつたとんがりコーンは食べられないだろう。」
乙:「それは最早とんがりコーンとは云えません。」
甲:「何を言つているのだ。腐ろうが、泥水に落ちようが、便器の中に落ちようが、とんがりコーンはとんがりコーンじやないか。腐っても鯛と云うだろう。」
乙:「いいえ、とんがりコーンは食べ物です。食べることのできないとんがりコーンなど、それは最早とんがりコーンとは云えないのです。」
甲:「否然し…」
乙:「甲さんはとんがりコーンは食べ物では無いと云うのですか。」
甲:「否、とんがりコーンは食べ物だろう。」
乙:「然らば、何故食べられないとんがりコーンなどと云うものを認めることができるのです。」
甲:「うむ。」
乙:「とんがりコーンは食べ物であるから、食べられないとんがりコーンなどと云うものは、最早とんがりコーンでは無いのです。食べられないとんがりコーンと云うものを認めることは、とんがりコーンが食べ物では無いこともあり得ることを認めることになつてしまうのですよ。」
甲:「然し、食べ物とて食べられなくなることはあるのでは無いか。」
乙:「食べ物とは、食べられる物、食べるべき物ですから、食べられなくなつた物、食べるべきでは無い物は、最早食べ物では無くなつたと云わざるを得ないでしょう。」
甲:「ううん、そうかも知れない。そうすると、とんがりコーンとは『ハウス食品が出している三角錐型の菓子』であり、『菓子』とは『食べられる物』であるから、食べられないとんがりコーンなどと云うものは『菓子』ではなく、従ってとんがりコーンでは無い。故に、食べられないとんがりコーンは存在しない、すなわち、全てのとんがりコーンは食べられる。こういうことかな。」
乙:「そうです。」
甲:「なるほど。そうかもしれぬ。」

こん、こん。

突然ドアを叩く音がした。

甲:「何方ですか。」
丙:「丙と云う者です。」
甲:「どうぞ開いて居ますからお入り下さい。」

ドアが開いた。背の高い喪服の男が立つて居た。

丙:「私はこの妄想日記に終わりを齎す殺し屋です。」