今世紀百物語

生きているのか死んでいるのか

空き家問題と不要不動産引き取りサービスのこと

少し前、開放型の刑務所から逃走した受刑者が広島県の向島という島の中で逃走しているのが連日ニュースになっていました。
向島にはなんと空き家が1000軒もあるそうで、警察も勝手に空き家の中を捜索することもできず、捜索が難航している原因となっていたそうです。

聞くところによると、空き家が増えているのは田舎だけではなく、札幌市内とかでも、郊外では空き家が増えているらしいです。
札幌市全体としては人口が微増のようですが、新しく札幌に移り住む人は交通の便が良いところのマンションに住むでしょうから、郊外は人が増えないのかもしれません。
他方で、郊外の一軒家に住んでいる人も歳をとってきて、入院したり施設に入ったり、そうでなくても、車の運転が大変だ、買い物や通院のための移動がつらい、雪かきが大変だ、などの理由で、郊外の一軒家を手放して、交通の便のよい中心部のマンションに移り住んでる人も多いみたいです。

そういうわけで、川沿とか藤野とかは空き家だらけだ、とか、中央区でも宮の森や界川とか円山西町みたいな「不便なのがステータス」的な山の上の地域に豪邸建てて住んでたお金持ちが、豪邸を売って山を降り、中心部のマンションに移り住んでいるとか、そういう話をよく聞きます。

実際、ネットで一軒家を探してみると、そういう地域の一軒家がかなり安い値段で売られています。
もはや、交通の便を気にしなければ、庭付き一軒家なんて、欲しければ簡単に手に入るようです。
ましてや、道内の札幌以外の地域なんて、もはや、人が住んでいる家の方が珍しいというくらい、空き家だらけなんでしょう。
夕張市だと、地区によっては空き家率が5割以上の地区もあるみたいです。

これは社会全体の傾向の問題なので、今後もこの傾向がさらに続き、空き家は増え続けるに違いありません。

そこでようやく本題ですが、空き家対策って現実的に何がありうるのか、頭の整理をしてみたいと思います。

売る・貸す

空き家の所有者になってしまった場合、まずはこれをお金に換えることを考えるでしょう。
売ってお金に換える方法もありますし、誰かに貸して家賃収入を得る方法もあります。

需要と供給の関係で価格は安くなるでしょうが、買い手・借り手にとっては嬉しいことでしょうし、売り手・貸し手にとっても、空き家のまま持ち続けるよりは、安くても買ってくれたり借りてくれたりした方がまだマシだという判断になるでしょう。

空き家のまま置いておく

売ったり貸したりできれば苦労ありません。
問題は、誰も買ってくれない、誰も借りてくれない空き家です。

空き家のまま置いておいても、人が住まない家はどんどん劣化していきますし、防犯上も問題です。事故でも起これば所有者の責任が問われかねません。

しかし、だからといって解体するかというと、そうはならないのが現実です。
住宅用地は固定資産税が減額されるのですが、空き家を解体してしまうと、住宅用地でなくなってしまい、固定資産税額は3~4倍になってしまうからです。

最近できた空家特例法で、危険・有害な「特定空家等」と認定されると、建物が建っていても固定資産税の減額を認めないこととする制度が始まりましたが、解体して固定資産税が3~4倍になるよりも、「特定空家等」に認定されない程度に適当に管理した方がマシですので、最低限の管理をする方向で頑張ることになります。

今後、さらに法改正が進んで、「すべての空き家に固定資産減税を認めない」となるかというと、そうはならないでしょう。空家には、別荘とか、地方に転勤中の実家とか、長期入院中の自宅とかもありますので。

万が一そのような法改正がされたとしても、解体して固定資産税が3~4倍になるよりは、住民票を移して、水道電気の契約をして、ときどき泊まったりして、居住の実態をつくる方がマシです。

そういうわけで、誰も買わない、誰も借りない建物であっても、解体せずそのまま持ち続けようとするでしょう。

そうなると、空き家管理サービスは、しばらくの間、安泰だといえそうです。

事実上放棄する

上記のとおり、誰も使わない空き家も、解体せず、最低限の管理をしながら持ち続ける、という状態がしばらく続きそうです。

とはいえ、そのようにして持ち続けても、固定資産税や管理費用の支出は続きますので、マイナスばかりで良いことがありません。

こんな土地もういらない、ということで所有権を放棄できるかというと、理論上はできそうですが、最近そんな裁判を起こした司法書士は敗訴したとのことで、所有権放棄は無理なのが現状です。

そうなると、もう、事実上放棄し、管理もせず、固定資産税も払わないでほったらかすしかありません。

その場合、家が建ったままだと、事故が起きたり誰かが住み着いたりしたら困りますし、どうせ放っておいたら最終的には特定空家等に認定されて固定資産税が3~4倍になるわけですし、そもそもどうせ固定資産税払わないわけですから、建物は解体して更地にした上で事実上放棄した方がよいわけです。

固定資産税を払わなければ差押えをされる可能性がありますが、その土地は差押えられて競売にされて誰かが買ってくれるのであればむしろありがたい話です。

もっとも、土地以外の個人の資産を差し押さえられる可能性ももちろんあります。
財産がなく、差し押さえられるものもないので何も怖くない、という人はこれができますが、そうでない人はこれができないという問題があります。

そこで、次のステージへ進むわけです。

不要な不動産の引き取りサービス

こうなると、そのうち、不要な不動産を引き取るサービスが出てくるに違いありません。
お金を払って不動産を買うのではなく、お金をもらって不動産を引き取ってあげるわけです。

引き取り業者は、引き取ったら、建物を解体して更地にした上で、固定資産税も支払わず、放置するのです。

固定資産税を支払わないと最終的には財産を差し押さえられてしまいますが、引き取った土地以外何も資産を持たない法人とか、よくわからない外国法人とかに所有させれば、何も怖くありません。

そうして、その土地は、事実上固定資産税の徴収ができない、謎の法人が所有する更地となり、所有権放棄して国に引き取ってもらったのと同様の効果を生じさせることができるわけです。

何か脱税みたいですが、固定資産税を払う能力のない人が土地を買ってはいけないという法律はありませんし、固定資産税を滞納すること自体は犯罪ではなく、現に小樽ベイシティなんか10年以上前から何十億円も滞納し続けていますし・・・。違法性はないのではないかと思います。保証はしませんが。

固定資産税滞納額25.9億円に 大半は「小樽ベイシティ開発(OBC)」 (小樽ジャーナル http://otaru-journal.com)

"倒産"から再建へ!OBCが民事再生申し立て (小樽ジャーナル http://otaru-journal.com)

実際にも、相続人が全員が相続放棄した土地とか、行方不明者名義の土地とか、管財人が財団から放棄した破産会社の所有する土地など、事実上これと同じような状態になっている土地はいっぱいあるはずです。

ある人に不要な不動産を帰属させて、その人が死んだ後、相続人が全員相続放棄をすれば、同じ状態がつくり出せます。あるいは、法人に不動産を帰属させた後、その法人を破産させれば、同じ状態がつくり出せます。 

今後、不動産引き取りサービスが現れ始めたら、行き着くところまで行ったということでしょう。

結局こうなるわけですから、最初から土地の所有権放棄を認めればいいのに。