今世紀百物語

生きているのか死んでいるのか

イソ弁の責任の事

突然ですが、弁護士職務基本規程では、ABAのモデル規程の5.1条(a)にならって、経営者弁護士は所属弁護士が弁護士職務基本規程を遵守するために必要な措置を採る努力義務が定められているんですが、

(遵守のための措置)
第55条
複数の弁護士が法律事務所…を共にする場合…において、その共同事務所に所属する弁護士を監督する権限のある弁護士は、所属弁護士がこの規程を遵守するための必要な措置をとるように努める。

解説によると、これは所属弁護士が非行を行った場合の経営者弁護士の責任を定めるものではないので、ボス弁自身の非行といえるような事情がない限り、イソ弁が懲戒処分になったとしてもボス弁は懲戒処分にはならないそうです。

ABAのモデル規程の5.1条の(c)をみてみると、ボス弁の責任について、

(c)弁護士は、以下のいずれかの場合には、他の弁護士による職務基本規程違反について責任を負う。
(1)その弁護士が命じ、又は、特定の行動を認識しながらその行動を承認したとき
(2)その弁護士が、当該法律事務所の経営者若しくは経営者に準じる権限を有する者、又は、当該他の弁護士に対する直接の監督権限を有する者であって、違反の結果を回避し又は軽減することが可能な時点において当該違反行為を認識していたにもかかわらず合理的な是正措置を採らなかったとき

と、ある程度明確に書かれていますが、その内容は、上記の解説とほぼ同じような感じです。

他方で、逆に、イソ弁の立場からすると、事務所事件でボス弁の指示どおりやっていたのに、ボス弁の巻き添えで懲戒されちゃあたまらない、というのもあると思います。これについて弁護士職務基本規程には何にも書いてありませんが、ABAのモデル規程の5.2条には、

第5.2条 従属弁護士の責任
(a)弁護士は、他の者の指示に従って行動する場合であっても、職務基本規程に拘束される。
(b)従属弁護士は、職業倫理に関する議論の余地のある問題についての監督弁護士の合理的な決定に従って行動した場合には、職務基本規程違反とはならない。

と書いてあるみたいです。

(a)の方は、要するに、イソ弁も弁護士なんだから、事務所事件でボス弁の指示があるとしても、職務基本規程に違反してはならない義務はありますよ、と、当然のことが書かれていますが、

(b)の方は、明らかな違反であればイソ弁もアウトだけれど、弁護士倫理に関する微妙な問題・見解の分かれる問題については、ボス弁の判断が一理あるものであれば、ボス弁の判断に従って行動しておけば、結果的にそれが職務基本規程違反だと判断されたとしても、イソ弁は責任を負いません、というわけです。

弁護士職務基本規程を作成している先生方はボス弁が多いのでイソ弁を擁護する条項を入れようという動機付けはない、ということなのかも知れませんが、イソ弁のみなさんボス弁の変な処理方針に巻き添えを食らいそうになったら、この条項を思い出すと良いかも知れません。