今世紀百物語

生きているのか死んでいるのか

「株式会社」の前後にスペースを入れる誤りとの戦いの事

f:id:darokie:20161120111915j:plain

「株式会社 楽天」などのように「株式会社」の前後にスペースを入れる人がいるが、私の説によればこれは誤りである。
しかしながら、通知書や契約書などをリーガルチェックしていると、「株式会社」の前後にスペースが入っていることがあまりに多く、訂正するのももう嫌になってきた。
そこで、このイライラを解消するため、「株式会社」の前後にスペースを入れることが法律的に誤りであるという自説を展開してみたいと思う。

株式会社は「人」である

会社は法人である。

会社法
第3条  会社は、法人とする。

「法人」とは、人間ではないけれども、法律によって「人」とみなすことにした存在である。人間ではないけれども、人間と同じように、権利義務の主体となることができるものとみなされている。人間でないものを人間とみなすものであり、法律で定められたフィクションである。

株式会社の名前は「人の名前」である

法人は「人」だから、株式会社の名称は「人の名前」である。
会社の名前のことを「商号」という(厳密には、会社の名前が会社の商号となる。)。

第6条 会社は、その名称を商号とする。

「株式会社」は,株式会社の名前の一部である

法人は法律で定められたフィクションであり、法律の定める制約の範囲でのみその存在が擬制されるものであるから、そのあり方もすべて法律で決められた制約に従うことになる。名前も同じであり、自由には決められず、法律の制約に従って名前を決めなければならない。
そして、法律では、株式会社の商号には「株式会社」という文字をその商号中に使用しなければならない。

会社法

第6条

2  会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。

これは何を意味するかというと、「株式会社」の部分も会社の名前の一部であるということである。

株式会社楽天という会社の名前は「株式会社楽天」であり、ソニー株式会社という会社の名前は「ソニー株式会社」なのであって、「楽天」とか「ソニー」だけでは、会社の名前としては不十分(名前の一部に過ぎない)ということである。

「株式会社」の前後にスペースが入る株式会社は存在しない

また、以下の理由により、株式会社の商号では、「株式会社」の前後にはスペース(空白)は入れることができない。

株式会社は、設立の登記がされて初めて法律によって存在が擬制されるものである。

会社法

第49条  株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。

そして、その登記にあたっては、その株式会社の名前たる「商号」も登記しなければならない。

会社法

911条  株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
(略)
3  第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
(略)
二  商号
(略)

商号を登記するときに使える文字は決まっており、スペースは、ローマ字を用いて複数の単語を表現する場合に限り、当該単語の間を区切るために使うことができることとされている。

商業登記規則

第50条  商号を登記するには、ローマ字その他の符号で法務大臣の指定するものを用いることができる。

法務大臣の指定)

※なお,ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り,当該単語の間を区切るために空白(スペース)を用いることもできます。

つまり、「株式会社Start Today」のように商号にローマ字を用いるときに、StartとTodayを区切るためにスペースを用いることができる。それ以外の場合には、商号にスペースを用いることはできない。スペースを用いることができるのはローマ字の単語とローマ字の単語を区切るときだけだから、「株式会社」とそれ以外の単語を区切るためにスペースを用いることはできない。「株式会社 Start Today」はダメである。
そうすると、株式会社の前後にスペースが来ることはありえない。すなわち、「株式会社」の前後にスペースが来る名前の株式会社は存在しない。

「株式会社」の前後にスペースを入れるのは、人の名前に余計なものを付け加えるのと同じである

このように、商号は、株式会社という人の名前であり、これを正確に表示しようとするのであれば、勝手に余計なものを付け加えてはならない。

スペース(空白)も同じである。「株式会社」の前後にスペースが入る名前の株式会社は存在しないのであるから,名前を正確に表示しようとするのであれば,スペースを勝手に付け加えてはならない。

株式会社楽天の名前は「株式会社楽天」なのであり、名前に勝手にスペースを入れて「株式会社 楽天」と書くのは、「株式会 社楽天」と書くのと同じように誤りである。

以上のとおり、「株式会社」の前後にスペースを入れるのは間違いである。

サービスの名称に付け加えるのは,人の名前に余計なものを付け加えるのと同じである

なお、会社の正式な名前を表示しようとするときには,商号に何かを付け足すこともしてはならない。

ときどき、「株式会社スタートトゥデイ ZOZOTOWN(以下「甲」という。)とXXX(以下「乙」という。)は・・・」というように、会社が営んでいるサービスの名称が付け加えられていることがある。
しかしながら、あくまで会社の名前は「株式会社スタートトゥデイ」であり、「株式会社スタートトゥデイ ZOZOTOWN」という名前ではない。「ZOZOTOWN」の部分は、ひとの名前に付け加えられた余計なものである。契約書で「山本太郎 元俳優(以下「甲」という。)とXXXは・・・」と書かないのと同じように、契約書で「株式会社スタートトゥデイ ZOZOTOWN(以下「甲」という。)とXXX(以下「乙」という。)は・・・」とは書かない。

「株式会社」の省略は,名前の一部の省略である

また、「株式会社」の部分も会社の名前の一部なのであるから、会社の正式な名前を表示しようとするときには、「株式会社」の部分は省略してはならない。

まれに、「株式会社」を省略して「楽天(以下「甲」という。)とソニー(以下「乙」という。)は・・・」という契約書を見かけるが,「株式会社」を省略するのは、人の名前の一部を省略することであり,山本太郎を太郎と呼ぶのと同じである。

山本太郎山本一郎が契約書を取り交わすときに「太郎(以下「甲」という。)と一郎(以下「乙」という。)は・・・」と書かないのと同じように、株式会社楽天ソニー株式会社が取り交わす契約書で「楽天(以下「甲」という。)とソニー(以下「乙」という。)は・・・」とは書かない。「株式会社」を省略せず、必ず、「株式会社楽天(以下「甲」という。)とソニー株式会社(以下「乙」という。)は・・・」と書かなければならない。

サービスの名称を書くのは,人の名前を間違えるのと同じである

ひどいときには、「ZOZOTOWN(以下「甲」という。)とXXX(以下「乙」という。)は・・・」というように、会社の名称を表示せず、会社が営んでいるサービスの名称が表示されていることもある。

ZOZOTOWNは株式会社スタートトゥデイが提供しているサービスであり、ZOZOTOWN自体は人ではない。サービスに過ぎないZOZOTOWNそれ自体は権利義務の主体にはなれず、契約を締結することはもできない。契約を締結する当事者はあくまで人たる株式会社スタートトゥデイである。トヨタ自動車株式会社が契約を締結することはできるが、プリウスは契約を締結することができないのと同じである。
なので、「ZOZOTOWN(以下「甲」という。)とXXX(以下「乙」という。)は・・・」という契約書は、当事者たる人の名前を間違っており、全然ダメである。

株式会社の名前と人間の氏名とは違う

なお、人間の名前の場合は「山本 太郎」のように氏と名の間にスペースを入れることがあり、これは誤りであるとは言い切れないが、それは、法人と異なり自然人には上記のような名前のルールはなく、かつ、人間の名前が「氏」と「名」という2つの部分から構成されているからである。「山本」も「太郎」もそれぞれその人を表す名前あり、「山本太郎」と合成されて初めてその人の名前となるわけではない。「山本」も山本太郎の名前であるし、「太郎」も山本太郎の名前である。だから、氏と名の区分を表示するために、氏と名の間にスペースを入れることがあり、そうしたとしても間違いであるとは言い切れない。

他方で、株式会社の商号は、「株式会社楽天」で初めて1つの名前である。「株式会社」と「楽天」の2つの部分から構成されているわけではない。「株式会社」が株式会社楽天の名前ではないのと同じように,「楽天」も、株式会社楽天の名前としては間違っている。「株式会社」も「楽天」もそれぞれ意味をもつ単語ではあるが、これらの単語と「株式会社楽天」とは別の単語である。

前株とか後株とかいう言葉もあるけれども,「株式会社」は商号の中に含まれればよいのであって、前か後でなければいけないわけではない。だから、中株というものもあり得る。「諸行無常株式会社盛者必衰」とか「ドキドキ株式会社モーニング」という会社だってあり得る。これらも,「ドキドキ株式会社モーニング」で初めて1つの名前なのであって、「ドキドキ」「株式会社」「モーニング」の3つの部分から構成されているわけではない。

三軒茶屋」と同じである。「三軒茶屋」は「三軒茶屋」で初めて1つの地名である。「三軒」も「茶屋」もそれぞれ意味を持つ単語ではあるが、「三軒茶屋」とは別の単語である。三軒茶屋のことを「三軒」と呼んだら間違いであるし、「茶屋」と呼んでも間違いである。だから,三軒茶屋のことを「三軒 茶屋」と書く人はいないし、そう書いたら誤りである。

あるいは,「メロンパン」と同じである。「メロンパン」は「メロンパン」で1つのパンの名前である。「メロン」も「パン」もそれぞれ意味を持つ単語であるが,「メロンパン」とは別の単語である。メロンパンのことを「メロン」と呼んだら間違いであるし、「パン」と呼んでも正確ではない。だから、メロンパンのことを「メロン パン」と書く人はいないし、そう書いたら誤りである。

結語

以上のとおり、「株式会社」の前後にスペースを入れるのは間違いなので、みなさん即刻やめてください。

ついでに、会社の名前にサービス名を付け加えたり、「株式会社」を省略したり、当事者名にサービス名を書いたりするのも大間違いなので、みなさん即刻やめてください。