今世紀百物語

生きているのか死んでいるのか

フリーエージェント社会の現代のこと

フリーエージェントネイションという本を読みました。

2002年に出ていた本の新装版というのが2014年に出たものらしいんだけれども,本屋でたまたま推されていたので買いました。

フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

 

内容は目次を読めばだいたいわかります。

序章 玄田有史
プロローグ

第I部 フリーエージェント時代が幕を開けた
第1章 組織人間の時代は終わった
第2章 全米の4人に1人がフリーエージェント! という衝撃
第3章 デジタル・マルクス主義が蔓延する

第II部 働き方の新たな常識とは?
第4章 これが新しい労働倫理だ
第5章 仕事のポートフォリオと分散投資を考える
第6章 仕事と時間の曖昧な関係

第III部 組織に縛られない生き方もできる
第7章 人との新しい結びつき方がある
第8章 利他主義で互いに恩恵を受ける
第9章 オフィスに代わる「サードプレイス(第3の場所)」
第10章 フリーエージェントに役立つ新ビジネス
第11章 「自分サイズ」のライフスタイルをみつけよう

第IV部 フリーエージェントを妨げる制度や習慣は変わるか
第12章 古い制度と現実のギャップは大きい
第13章 万年臨時社員の実態と新しい労働運動の始まり

第V部 未来の社会はこう変わる
第14章 「定年退職」は過去のものになった
第15章 教育はテイラーメードできるようになる
第16章 生活空間と仕事場は緩やかに融合していく
第17章 個人が株式を発行する
第18章 ジャスト・イン・タイム政治が始まる
第19章 フリーエージェントで未来は大きく変わる

エピローグ

タイトルと目次から分かるとおり,「これからはフリーエージェントだ!」という本なのですが,以下のようなことが書かれています。

仕事は人材とプロジェクトでできている

仕事の構成要素は何かという話で,会社などの組織で働くことが当たり前だと考えていると,あたかも,オフィスがあって,組織があって,そこに行くと仕事があるかのように思ってしまうけれども,実際にはそうではなくて,まずプロジェクトがあって,そこに適切な人材が集まってチームができて、そこに仕事があるのだということのようです。

なので,別にオフィスがなくても,組織がなくても,プロジェクトと人材があればそこに仕事がある,ということのようです。組織に属していないフリーエージェントは,プロジェクトがあればそこに集まって仕事をし,プロジェクトを完成させて、終わったら解散し、各々がまた別のプロジェクトへ出かけていく、ということでいいんだということのようです。だから決まった組織に永続的に帰属することは仕事をするために不可欠ではないのだと。

そりゃそうかも知れませんが,フットワークの軽さとネットワークの広さが必要になりそうです。

ピーターの法則・ピーターアウトの法則

ピーターの法則っていうものがあるんですね。知りませんでした。

ピーターの法則というのは,私なりの理解でいうと,組織では人はみなギリギリできないところまで出世するので,結局できないヤツだらけになる,という法則のようです

例えば,Aさんはそこそこの能力があるから平社員から係長,課長,部長とどんどん出世したけれども,能力的には部長の仕事をこなすのがギリギリやっとなので,それ以上は出世できない。Bさんは平社員から係長,課長と出世したけれども,課長の仕事をこなすのがぎりぎりやっとなので,部長には出世できず課長のまま。Cさんは係長になったけれども,係長の仕事を何とかぎりぎりこなせる程度の能力なので,それ以上出世できず係長のまま。Dさんは能力がないのでずっと平社員のまま。

そうすると,この会社は,部長職をなんとかギリギリやっとでこなしているAさん,課長職をなんとかギリギリやっとでこなしているBさん,係長職をなんとかギリギリやっとでこなしているCさん,平社員職をなんとかギリギリやっとでこなしているDさん,というように,みんながギリギリなんとかやっと仕事をこなしているレベルの人だらけになってしまい,自分の仕事をバリバリこなしている人がいない組織になってしまう,ということのようです。

そして,この本では,さらにピーターアウトの法則というのがあるのだということが書いてありまして,人は組織で自分の能力をぎりぎり超えるくらいのところまで出世するけれども,そこで結局嫌になって,辞めていくんだ,という法則のようです。法則というよりも主張という感じですが。

仕事とプライベート、職場と自宅とサードプレイス

昔は,だいたいの仕事が家業で,仕事とプライベートは分けられていなかったけれども,工業化によって,仕事とプライベートは分けるべきものという考えが主流になったそうです。しかし,時間切り売りの工業化時代の働き方が終わり,フリーエージェントの時代になると,再び,仕事とプライベートは分けられない状態に戻っていく,という主張がされています。

働く場所についても同じで,仕事は職場,プライベートは自宅,という区分けも再び消えていき,自宅で仕事をすることも普通になっていき,さらに,スタバのような,自宅でもない職場でもない第三の場所が働く場所として重要になってくる,ということも書かれています。ノマドでスタバでマックブックを予言したということでしょうか。

こういう働き方自体は賛成でぜひ実行したいんですが,仕事というかビジネスのなかには,一定の場所で一定のお店を開いているということそれ自体がけっこう大事なものもあります。たとえば不動産屋さんとかって,業務の内容自体は,別に一定の場所で一定のお店を構えている必要は実は全然なくて,インターネットで物件を掲載して,問い合わせを受けたら現場に行って紹介したりするだけですし,契約書の取り交わしとかも郵送でやりとりしたりすればいいので,お店を構える必要はなく,実際自宅兼店舗みたいな不動産屋さんもありますが,でも,現実には,お店があった方がお客さんが来るし,お店がなければお客さんは来ないと思うんです。士業でも,別に事務所を構える必要はありませんし,例えば税理士さんなんかは打ち合わせなども顧客企業を訪問して行うことにして,書類整理や申告書作成などは自宅ですることにすれば,事務所なんて無くても業務自体には支障がないと思うんですが,でも,現実には,仮に事務所を持たない士業がいたとしても,依頼する人はあんまりいないと思うんです。

自宅とか第三の場所とか好きな場所で仕事をした方が効率的だとは思うんですが,お客さん心理としては物理的な店舗があることそれ自体を重視するところがあるので,両立が難しいところです。

横のつながり

フリーエージェントは組織に属さないので,組織内の縦のつながりはなくなりますが,その代わり,フリーエージェント同士の横のつながりが大事になるそうです。

組織にいたら仕事が上から降ってきますが,フリーエージェントになると仕事は上から振ってきませんので横のつながりを広げて仕事をゲットしなければならないので,当たり前といえば当たり前です。

週単位、年単位

組織に属している人はたいてい1日8時間働いていて,その1日の中でやるべき仕事をやりくりしています。フリーエージェントの人も働いている時間のトータルはあまり変わらないそうですが,仕事を1日単位でやりくりするのではなく,週単位や年単位でやりくりでき,月曜日はやる気が出ないから午後だけ働き,その代わり火曜日には夜中まで働く,とか,土日もちょっと仕事をする代わりに平日は15時までしか働かない,とか,あるいは夏はできるだけ働かずに夏休みも多めにとり,その代わりそれ以外の季節はバリバリ働く,とか,調整ができるそうです。働く時間のトータルが変わらないとしても,このようにやりくりを自分でできるということが,自分が自由だと感じるためには非常に重要なことだそうです。

それは確かにそうかもしれません。自分も,今日は気分が乗らないから早く帰ろう,とか,来週楽したいので今週バリバリ仕事を片付けてしまおう,とか,勝手にやっていますが,もし9時から18時までは必ず働けと言われたら多分やる気無くします。

社会保険

フリーエージェントになると健康保険などの社会保険が手薄になるので対策をとるべき,ということのようです。

この本はアメリカの話なのですが,日本でも同じで,会社員という枠にはまっている人は健康保険も年金も手厚いですが,そこから外れると非常に冷たく扱われてしまい,自分で対策することが必要になります。

今度,個人事業主の社会保障制度をまとめてみようと思います。

クラブ

フリーエージェントになったら,同僚に悩みとか相談とかするということができなくなるので,色々な集まりに参加した方がいい,ということのようです。アメリカでどういうのがあるのか知りませんが,状況は日本でも同じで,経営者はライオンズクラブとかロータリーとか各種会議所とか各種同友会とかの集まりに参加しますし,各業界にも業界内の集まり的なものがたくさんあります。組織の中にいると,嫌でも常に周りに人がいて,嫌でも関わり合わなきゃならない状況が続くので,分からないと思いますが,フリーエージェントになると,孤独なので,仲間が欲しいということなんだと思います。

資金調達

資金調達のために個人で株式を発行するようなことができるようになるはずだ,的なことが書かれていて,クラウドファンディングを予言するかのような内容でした。

自分が今からもし事業をするためにお金を用意するとしたら日本政策金融公庫の超絶有利な融資を利用すると思いますが,さらにアイデアが面白くて関心を集められそうであれば,クラウドファンディングをやってみるかもしれません。

感想

全体として,ほとんど書かれてあるとおりになっており,10年以上前の本だということを考えるとすごいなと。

しかし,本当は,10年後にそう言われるような今の本があればそれを読みたい。