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今世紀百物語

生きているのか死んでいるのか

すすきのを徘徊するドッペルゲンガーのこと

先月くらいまでなんだかんだと立て込んでて、精神的に追い詰められていたんですが、それがひと段落したので、先月、数か月ぶりにいそのかづおに行って、札幌ブラックを食べたんですよ。
 
「何か月ぶりだろうか、すっごい久しぶりだわ」という感慨というか、戻ってきたんだなぁ的な感動に浸りながら札幌ブラックを注文しようとして「スイマセーン」と大将に声をかけたら、大将が
 
「いつもの札幌ブラックでよろしいですか?」
 
って言ったんですよ。
 
「えっ、ついに「いつもの」と注文できるくらいになっちゃったのかしら、ここ数か月は全然来てなかったのになぁ、それとも聞き間違いかしら」などと思いながら札幌ブラックを堪能して、お会計を済ませて帰ろうとしたら、大将が
 
「いつもありがとうございます」
 
って言ったんですよ。
これは聞き間違いじゃないなと。
 
いそのかづおの大将は、愛想はよくて怖い感じではないんだけど、そんな誰にでも媚びを売る商売上手っていうような感じでもなくて、どちらかというと職人的な雰囲気なんですよ。
そんな大将がこう言うってことは、これはついに常連と認められたな、一線を超えたな、って思ったんです。
 
 
ところで、昨日のことなんですが、とある遠方から来た友人の歓迎パーティーを終えて、まだ21時半くらいだったので、さすがにまだ帰るのも早いかなと思い、かといって行きたい店も心当たりがなかったので、こんなときは冒険だと思って、案内所経由で、一回も行ったことがないニュークラブに行ったんですよ。
ご新規様だから、女性が短時間で入れ替わり立ち替わりやって来るんですが、三人目に来た女性が僕の顔を見て
 
「お久しぶりですぅ〜」
 
って言ったんですよ。
しかし全然心当たりがないので、話題づくり的に冗談で言ってるのかなと思いつつ、「え?会ったことあるっけ?この店初めて来たんだけど」と言ったら、意外にもなんか曖昧な感じの微妙なリアクションをするんですよ。まるで、「会ったことありますよ。覚えてるんでしょ。まぁここでは知らないふりをしたいということであればそれでもいいけど。」とでも言うかのような、それ以外にも何か言いたげな、すごい微妙な感じの反応をするんですよ。
 
これはマジで会ったことあるんだなと。
しかも会ったことない振りをしてると思われても仕方がないようなところで会ったことがあるんだなと。
そう思ったんですが、顔をまじまじと見ても全然心当たりがないわけです。
 
 
そうして、何となくもやもやした気持ちを抱えながら店を出て、獅子王という濃厚温玉味噌ラーメンの店に行ったんです。
このラーメンは濃厚なんだけど、天下一品とか二郎とかみたいな脂ぎった濃厚さでは全くなく、カルボナーラのような方向性の濃厚さで、とても美味しいんです。
ですが、それなりに食べ飲みした後のシメとしてはやはりちょっとヘビーなんです。
なので、昨日みたいに一次会で大して食べてない日にしか行けないんです。
そのため、なかなか行ける機会がなかったんですが、昨日たまたま、温玉だけにたまたま獅子王の前を通りかかって、今日なら行けるわという感じだったので、たぶんもう1年ぶりくらい久しぶりに行ったんです。
 
そうして濃厚温玉味噌ラーメンを堪能して、お会計を済ませて、帰ろうとしたとき、お店の方から、
 
「いつもありがとうございます。またお待ちしてます。」
 
って言われたんです。
 
 
 
ピーンと来ました。
 
ありえないですね。
なんせ1年ぶりくらいですから。
その前だって何回か行ったくらいで、そんな通いつめたっていうほどじゃないですから。
さすがに覚えてるはずないですね。
 
 
これは完全に自分のドッペルゲンガーがすすきの徘徊してますわ。
 
 
ウィキペディア見たら、ドッペルゲンガーって「生きている人間の霊的な生き写し」のことで、ドッペルゲンガーの特徴として、
 
ドッペルゲンガーの人物は周囲の人間と会話をしない。
・本人に関係のある場所に出現する。
 
などがあるそうです。
 
自分のドッペルゲンガーニュークラブで会話せずにいったい何をしていたんだと。
さぞかし奇妙な客だったに違いない。そう考えると、ニュークラブの女性の微妙な反応も納得がいきます。
 
このドッペルゲンガーウィキペディアの記事はなかなか面白くて、リンカーン芥川龍之介が自分のドッペルゲンガーを見たという記録があるとか、ピタゴラスが二箇所で同時に大勢に目撃された記録があるとか書いてあるんですが、自分のドッペルゲンガーを見ると死ぬらしいとも書いてあるんです。
 
これはうかつにすすきの徘徊できませんわ。自分のドッペルゲンガーに出くわすかもしれませんからね。
 
ちょっと様子がおかしい僕がすすきのを徘徊していたら、それは僕ではなくて僕のドッペルゲンガーですので、ご了承ください。