今世紀百物語

生きているのか死んでいるのか

サイバーシティビルで海鮮食べ放題のこと


人は他人に感謝されるために生きているのだそうです。

 

先日、歩いてジュンク堂札幌店に向かっていたところ、ジュンク堂前の道ばたで、出張中と思われる中年男性3人がたたずんでいました。

 

3人のうち1人はハゲかけているんですが、この人が道案内担当だったらしく、片手に地図を持ちながら「札幌テレビ塔がここらへんにあるはずなんだけどなぁ」などとつぶやいていました。

 

その様子を見て、僕は、こう思ってしまったんです。

 

 

「札幌中心部で道に迷うって(笑)。救いようがないわ。」

 

 

ご存じのように、札幌中心部は街が碁盤の目のようになっていて、

 

南北は大通公園を軸に北1条、北2条・・・、南1条、南2条・・・

 

東西は創成川を軸に西1丁目、西2丁目・・・、東1丁目、東2丁目・・・

 

となっているじゃないですか。

 

しかも、街のいたるところに「南1西2」というような表示があるじゃないですか。

 

だから、3人のおっさんたちも、そこら辺を見れば「南1西2」と書いてあるんだから、現在地が南1西2だとすぐわかるじゃないですか。

 

そして、もし南2西3に行きたいんであれば、南に1ブロック行って西に1ブロック行けばだいたい目的地の近くに着くじゃないですか。

 

そんな札幌の中心部で道に迷うっていうのは、

 

エクセルで「D3のセルに10と入力してください」と言われてもD3のセルを見つけられないのと同じくらい、

 

「6月の第2火曜日は何日だっけ」と聞かれてカレンダーを見てもその日を見つけられないのと同じくらい、

 

「救いようがない」と思ったのです。


救いようがないので、救えません。

僕は、「どうしました」などと声をかけることもなく、おじさんたち3人の横をすーっと通り過ぎ、ジュンク堂に行ったわけです。

 

 


ジュンク堂で買い物をした後、栄養食品を買いにスポーツ館に行きました。

 

スポーツ館はちょうど閉店間際だったので、適当に栄養食品をみつくろって会計し、外に出ました。

 

すると、近くにいたタイ人らしき中年の女性が、私を見つけるやいなや、ずんずんと近づいてきて、Excuse me.と言いました。

 

何ごとかと思ったら、道に迷ってるようでした。

 

「サイバービルって分かりますか?」

 

「サイバービル、サイバービル・・・。」

 

そんなビルあったような気もするけれど、思い出せません。

 

しかし、住所が分かれば道に迷わないのが札幌中心部ですから、ここで札幌の歩き方のお手本を見せようと思い、

 

「住所分かりますか?」

 

と聞きました。「南5西4」と言われたら、「それなら南に2ブロック行って西に1ブロックだよ(ドヤ)」と言おうと思ったのです。

 

しかし、その女性は、

 

「住所は分からない。携帯もローミングがないから調べられない。」

 

と言いました。出鼻をくじかれました。

 

その女性は、誰かとの待ち合わせに遅れているのか、かなりあせっている感じが伝わってきました。

 

僕もつられて何かあせってきました。

 

あせりながらiPhoneを取り出し、グーグルマップで「サイバービル」と検索していみますが、出てきません。

 

すると、その女性が、「ビルの写真はある」と言って、携帯で目的のビルの写真を見せてきたのです。

その写真には、「CYBER CITY」と表示されたビルが映し出されていました。

 

僕とその女性は「サイバーシティビル!」と、2人で声を合わせて言いました。

 

サイバーシティビル!・・・・・どこだっけ!?

 

キリンビール園があるところかな・・・あれはアーバンビルか。

立入危険のあのビルか・・・あれはシティボーイズビルか。

待てよ・・・ららつーのあるビルか!


などと考えていると、その女性がヒントをくれました。

 

「そこでビュッフェを食べるんだ」

 

ビュッフェ?

ららつーのあるあのビルにビュッフェなんかあったっかな。

ららつーでしょ,ライブバーでしょ,メイドさんのお店でしょ,飲み屋ばっかりじゃないの?

違うのかな・・・。でもサイバーシティビルといったらあのビルしかないよな・・・。

 

そう思った僕は、女性のヒントを聞いてかなり自信がなくなってしまったため、すごく自信なさげに、南東の方角を指さして、

 

「あっちの方かな」

 

と言いました。

 

そうしたところ、その女性は、納得したように、すすきの方面へ早歩きで歩いて立ち去ったのでした。

 

その女性と向かう方向が同じだったので、その女性が立ち去った後も、僕は、その女性の後ろを少し離れて歩いていました。

歩きながらグーグルマップでサイバーシティビルを確認したところ、やはり女性が持っていた写真と一致しました。

ららつーが入っているあのサイバーシティビルで間違いありません。

サイバーシティビルは南5西2です。

自信なさげに「あっちかな」と言った説明は間違っていませんでした。

 


その後、その女性は南4西3あたりでまたキョロキョロし始めました。

 

それはそうです。具体的な場所を教えておらず、超自信なさげに南東を指さして「あっちの方かな」と言っただけですので、分かるわけありません。

 

人混みの中ですので、また誰か周りの人に聞くのかなと様子を見ていましたが、そうする様子はありません。

ただキョロキョロしてあせっています。

 

これは見ていられない。

 

仮にその女性が誰か別の人に聞いたとしても、その人が教えてくれるとは限りません。サイバーシティビルを知らないかも知れないし、そもそも英語で話しかけられたら「あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ、そーりー」と言って逃げてしまうかもしれませんし,「あぅあぅあ」となるかもしれません。

 

この状況でホスピタリティを発揮できるのは自分だけだ

 

この女性はきっと今すごく困っている

 

ここでさらに詳しく道を教えてあげればとても感謝されるに違いない

 

先月プーケットではさんざんタイの皆様に暖かく迎えてもらったではないか、北のプーケットを目指す北海道の道民としては、ここでホスピタリティを発揮して好印象を残すべきだ

 

そう思うや否や、僕は駆け出し、その女性に追いつき、声をかけました。

 

そして、iPhoneグーグルマップを見せながら、「我々は今ここにいて、サイバーシティビルはここだから、ここを1ブロックまっすぐ行ってから左に曲がってください」と、詳しく説明しました。

 

 

その女性は理解したようで、

「にこっ」と笑った後、

何も言わずに駆け出し,

点滅した横断歩道を走って渡り、

サイバーシティビルに向かって行きました。

 

 

僕は思ってしまいました。

 

「あれ・・・感謝の言葉は?」

 

と。

 


別に感謝されたくて教えたわけではありません。

最初に詳しく説明しなかった自分が悪いのも分かっています。

待ち合わせに遅れていたので急いでいたのかも知れません。

 

しかし、それでも、「あれ・・・感謝の言葉は?」と思ってしまったわけです。

無意識のうちに、感謝されるだろうと思ってしまっていたのです。

「サンキュー」とか「コープンカー」とか言われるだろうと想定してしまっていたのです。

 

そして、

「あぁ、俺は感謝されたかったんだ」

と気づいたのです。

 

そして、

「あぁ、人は他人に感謝されるために生きているんだ」

と思い至ったのです。

 


しかし、ここでつじつまが合わなくなりました。

感謝されたいのであれば、どうしてジュンク堂の前で迷っていた

おじさん3人にも道を教えてあげなかったのだろうか、

教えてあげれば感謝されたに違いないのに。

 

僕は考えました。

おっさん3人と中年タイ人女性との違いをすべて列挙して比較検討し、

考え抜きました。

考え抜きましたが、分かりませんでした。

この話のオチをどうすべきなのか考え抜きましたが、

さっぱり分かりませんでした。

 

タイ人女性が行ったと思われるビュッフェは「難陀」という店のようです。

三大蟹、海鮮、寿司、国産和牛などが食べ放題で3980円という夢のようなところらしいので、一度下見に行きたいと思います。

 

難陀

食べログ難陀