今世紀百物語

生きているのか死んでいるのか

おうむ返しの事

検事質問におうむ返し 取り調べDVD、起訴撤回決め手
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201101200007.html

 「あたたかいドリアやグラタンなどが食べたくて、買うお金がなかったので、お金を盗もうと思って(長屋に)入ったのでした」「その火が、長屋に燃え移ろうが、何だろうが、どうでもいいという気持ちでした。(中略)雨が降っていましたが、火は消えませんでした。むしろ、その火は横に広がっていきました」
約20分かけて検事が読み上げた。その間、男性があくびをするなどしたため、検事が「大丈夫ですか」と質問。男性は「はい」と答えた。

検事「おなかすいちゃったという話やったな」

男性「おなかすいちゃったという話やった」

検事「うん、それはええんやな」

男性「うん、それでいいです」

男性の答えは調書の内容のように滑らかではなく、検事の質問をおうむ返しにした。その後、検事の質問は火を付けた時の状況に移った。

検事「火をつけるのにライターとかいろいろあるけど、何使ったん?」

男性「ライター」(中略)

検事「火は広がったのかな(中略)縦にいったん? 横にいったん? どっち? 横? 横にいったん?

男性「横にいった

検事「そのあたりまでは見てたんか?」

男性「見てなかった

検事「見てたんか?」

男性「はい」

検事「見てたのでいいのかな」

男性「はい、見てた


とてもリアルな記事で興味深い。
このケースがどうかはともかくとして、こうやって、実際の会話のやりとりを撮ったDVDと整えられた調書とを比較できるようになってくると、調書って何だったのかということになってくる。
取調べで被疑者が一人称で独白してそれを書面に書き留めるなんてことはあり得ないのから、調書は本当は被疑者の供述を録取した書面ではなく、むしろ、録音録画された媒体こそが、文字通り被疑者の供述を録取した媒体だったことに気づいてくる。本当は後者が証拠となるべきなら、後者が可能であれば前者は不要という常識的な結論に至ってくる。
調書が、被疑者の供述を録取した書面ではなく、被疑者が自身が調書に書かれているとおり述べたものとして扱われることに同意した書面にすぎないのであれば、裏では後者の同意をするかどうかの駆け引きが行われているのにそれが前者であるかのような体で表に出す茶番はやめて、正面から司法取引を導入した方がよい。