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今世紀百物語

生きているのか死んでいるのか

サイゴン

東亜放浪之事 放浪之事

朝6時過ぎに起きて、準備して、1階へ行く。
昨日の店員が待ってる。
「いやぁ昨日は1時間しか寝てないから眠い」とか言ってる。

- まず私のお母さんのいるカフェへ行こう、そしてそれから第8地区へ行こう。
- お母さん?
- そうだ、でも本当の母親じゃない。
- カフェか。
- そうだ。
- わかった。

少し歩いて、カフェというか青空食堂みたいなところへ行く。
お母さんだ。本当のお母さんじゃないけど、お母さんと呼んでる。
とてもお世話になってる。単にお世話になってる人ということらしい。
そのお母さんと店員がぺらぺら話をしている。たまに店員が訳す。今、あなたの髪は横とか後ろとかを切ったほうがいいという話をしている、などと解説する。

しばらく二人が世間話らしき話をした後、店員が、第8地区へ行こうと言う。
第8地区ってどこだと聞くと、観光客用らしき地図を取り出し、ここだと指差す。 チャイナタウンのチョロン地区の南側らしい。
いいよ、と言い、店を出、バイクタクシー2台に分乗し、出発する。
しばらく走り、中国人街っぽーところを通 り、橋をわたり、床屋らしき店の前で止まる。ここは私の友人の店だ。昨日もうちのバーに来てたんだ。ここで髪を切れ。と言う。
そろそろ切りたかったので、いくらか聞くと、2ドルだというので、切ってもらうことにする。はさみの切れ味が悪くて、髪がひっぱらさり、痛い。

そのうち奥から、いま起きましたという感じの太めの男がやってきて、店員と世間話をする。この人が店員の友人らしい。友人が切るわけじゃないのか。

髪 が切り終わり、なぜか耳掃除もしてくれる。そして、終わった後、店員が、シーフードを食べに行こうと言う。

- いいよ。
- タクシーで行こう。
- 高いんじゃないの?
- 安いよ。10000ドンくらいだ。
- じゃあいいよ。

タクシーを止め、俺、バー&宿の店員(甲とする)、床屋の太目の男(乙とする)、床屋の細めの男(丙とす る)が乗り、走り出す。

少し走って、食堂風の店の前で止まる。タクシー代は甲が払う。降りてその食堂風の店で座り、甲がなにか注文する。
少 しして、貝を煮たやつが出てくる。酒のつまみのよう。
ビールも出てくる。
貝はまあまあ。
また貝が出てくる。今度はツブみたいなやつ。これもまあまあ。
また 貝が出てくる。今度のはうまい。
丙が、貝を口に入れてから、この葉っぱを口に入れて食べろ、とジェスチャーで言う。
その通りにやると、よし、みたいな顔を する。
葉っぱはくせのある味。そのまま貝食べたほうがうまいが、そのまま食べようとすると丙が葉っぱも一緒に食べろと言うので、仕方なく葉っぱも食う。

甲乙丙がなにやら話し、甲が、今ピクニックについて話してるんだ、みんなピクニックが大好きなんだ、と説明する。少しして、これから魚をなんたらかんたらしに行こう、丙の家だ、と言う。釣りをするのか?と聞くとそうだというので、面白そうだからいいよと言う。

お勘定。30万ドン。高い。甲が、俺が10万ドン出すから、お前は20万ドン出せと言う。
うわお前もぼったくりやろうかよ、と思い、そんなに払ったら空港 行けなくなるって、と言うと、いや後で丙が5万ドン渡す、そして次の店とかこれからのタクシー代とかは乙と丙が払うんだ、これでみんな同じだろ、と言う。 本当か?本当だ、心配するな。本当ならまあ大体割り勘になるなと計算し、20万ドン払う。少しして、どっかから戻ってきた丙が5万ドン渡してくれる。おお本当っぽい。

少しして、甲の弟だという男(丁とする)と、なんだか知らない男(戊とする)がどこからかやってくる。そして、ワゴン風のタク シーに乗り、出発する。高速道路みたいなところに入る。うわぁすげえ遠くに行くみたいだ、俺の金当てにして豪遊しようとしてるんじゃないだろうか、またかぁ・・・と思っていると、高速道路みたいなところに入ってからすぐ止まった。で、あぜ道みたいな道を歩いて進むと、1軒の建物がある。丙が、ここが俺の家だという。その庭みたいなところを入っていくと、テーブルといすがある。その近くに池がある。魚が泳いでて、池の片隅ではおっさんが網で魚獲ってる。

イ スにみんなが座ると、女の人がやってきて紙おしぼりを配る。ここは店なのか家なのか。
しばらくすると、ビンコーラと謎の酒、草みたいな野菜いっぱいが運ばれてくる。丙が、大き目のコップにビンコーラと謎の酒を入れて混ぜ、それをおちょこみたいなちっちゃいグラスに入れて、隣の乙に渡す。乙がそれを飲み、ま たコップからおちょこにコーラ酒を入れて、俺に渡す。飲む。相当きつい。で、ついで隣の人に渡し、隣の人がそれを飲んで、また注ぎ、さらに隣の人に渡す、 というのがぐるぐる続く。
そのうち焼いた魚と白くて丸い紙みたいなものが運ばれてくる。どうやら釣りじゃなくて、魚を食べに行くということだったらしい。
白い丸い紙を水で濡らしてやわらかくして、草みたいな野菜と焼いた魚を包んで、辛いタレをつけて、食べる。なかなかうまい。特に魚。白い丸い紙はたぶんラ イスペーパーだろう。それを食べ終わると、ガスコンロとなべが運ばれてくる。中身はさっきと同じ魚と、さっきのとはちがう野菜。魚鍋らしい。まだ食うのか よ。これはそれほどうまくない。

コーラ酒が数回回ってきて、もうこれ以上飲むとよっぱらって危険だと思い、飲んだ振りして全部こぼしたりする。
乙がなんか歌いながらくねくね踊っている。甲が、乙はレディーボーイだと言う。えぇ!レディーボーイかよ!乙が、カラオケやらないかと言う。歌うのは 上手くないから好きじゃないと言うと、じゃあ俺が歌うのを聞いてくれと言う。気が進まなかったが、とくにやることもないので、それならいいよという。庭の 奥の方にある、物置小屋みたいな建物の中へ入る。テーブルとイスと、テレビとマイクとスピーカーがある。完全にカラオケボックスだ。甲乙丙がベトナム語の 歌を歌う。女の人が、食べかけの魚鍋とか、コーラ酒とか、デザートのスイカとかをカラオケ部屋まで運んでくれる。ほんとにここは丙の家なのか店なのかその 両方なのか。

3,40分くらいカラオケが続き、終了。テーブルとイスのあるところへ戻る。退屈だし、これ以上こいつらに付き合ってるとまた金出せと言われ るかもしれないし、ぎりぎりになって空港行くのはいやなので、もうそろそろ空港行かないと、と甲に言うと、わかった今タクシーを呼ぶ、と言う。15分くら い待つ。甲と乙がなにやら話し、甲が俺に、少し乙と二人で話をしてくれと言う。俺にその気はないと言うと、話するだけだからと言い、甲がどっか立ち去る。 いつの間にやら丙丁戊もいない。やべぇ・・と少し思った。乙は甲ほど英語はしゃべれないらしく、片言の英語で話す。

- 今度またサイゴンに来るのはいつだ?
- 早くて今年の夏かな。半年後。
- そうか半年後か、来たら必ず俺の店に来てくれ。よかったらメールアドレス教えてくれないか。
- いいよ。
- ここに書いてくれ。

書き書き。

- おぉありがとう。絶対メールする。メールしたら返事送ってくれよ。
- うん送るわ。
- 俺の名前わかるか。
- アリでしょ。
- そうだ。名刺をあげる。
- さっきもらったよ。ほら。
- そうか。そこに書いてあるのがおれの電話番号だ。日本に帰ったら電話してくれ。
- 電話?俺が?
- そう、絶対電話してくれよ。
- わ、わかったw(シナイケド)

そ こに甲と丙が戻ってくる。大丈夫だ心配ない、タクシーが来るまであっちで待っていよう、とカラオケの部屋へ連れて行く。
で、イスに座ると俺のほうに寄り 添ってきて、私はあなたのことが好きだ、と言ってくる。

- えぇ?お前もレディーボーイかよ。
- ちがう、いままで全然レディーボーイではなかったんだけど、いま あなたを見て、あなたが好きだとわかったんだ。

 と言って、甲は俺のほうに体重を預けてきて、わき腹とか背中とかをつついたりさすったりしてくる。
ちょっとあのタクシー来るよ。タクシー。と言って、力ずくでカラオケ部屋を抜け出す。もしかして甲乙丙丁戊みんなレディーボーイなんじゃないのだろうか・・・。

テーブルとイスのあるところに戻ると、甲が追いかけてきてまた隣に座る。
ごめんなさい、怒らないで、あなたは怒っているみたいだ、大丈夫?
ちがうんだよ、本当に今までレディーボーイの気はまったくなかったの。今あなたを見て初めて男を好きになったの。
まじで勘弁してくれ。
昨日あなたがうちに来たとき、部屋で会って握手したでしょ。そのときからいいなって思ってたの。
・・・(じゃあ今初めてじゃなくて、昨日の時点で既にだろ。つうかずっと前からだろ。)
あなたは私のことどう思ってるの?
(うわぁ、核心に迫ってきた。これで全否定したらここに置いてけ掘りにされるかも知れないから、なんとかごまかしつつ宿まで帰してもらうしかないな・・・)
んん?why何?
(英語わかんない振りしか思いつかなかった・・・How do you think about me?って中1でもわかるけど、わかりたくねー・・・)

- あなたは私のことをどう思ってるの?
- んん?何て言ってるかわからない。

こ れ以上追求してこなかった。幸運だ。もう飛行機の時間あるから帰らなきゃならないというと、やっと返してくれる気になったようで、じゃああっちの道路まで 行こう、バスで帰る、と言う。絶対タクシー呼んだっていうのは嘘だ・・・。

で、丙と別れ、俺と甲乙丁で道路まで行く。戊はいつの間にか居なくなってる。少 ししてバスというか軽トラックがやってくる。荷台の長いすに座る。片方3人掛けくらいの長さなのに既に4人座ってる。5人目としてはきつい。甲が、小銭が ないのでバス代はらってくれと言う。払う。確か6千ドンくらい。甲と乙は向かい合っている長いすと長いすの間にしゃがむ。甲乙がなにやら興奮してしゃべっ ている。向かいのイスに座っている女の人が、顔を横に向けて笑っている。甲乙の話を聞いて笑いをこらえ切れなくなったらしい。「俺は違うよ」というベトナ ム語を勉強しておくべきだった。

バス停まで行き、乙と別れる。メールちょうだいよと言うので、わかったと言っておく。そこからバイクタク シー2台に分乗して、甲と宿へ戻る。帰れてよかった。バス代払った以外は本当に払わなくて済んだし、ぼったくりの類ではなかったようだ。でも違う類も相当きつい。もう早く去りたかったので、宿の部屋に戻ってバッグをとり、もう行くよ、と言ってチェックアウトして、宿の前に居たタクシーに乗る。甲が別れ際 に、半年後に絶対来てね、メール送るからね、などという。わかった。と応え、タクシーに出発してもらう。

空港に着く。出発までかなり時間がある。だけど空港は全然店とかない。仕方がないので階段の下のスペースでバッグを枕にして寝転がり、本を読んだり寝たりして待ち、やっと時間が来たので出国し飛行機に乗る。

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